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【さん生さんちの台所】第3号

●台所エッセイ『じゃが芋の話』

男の人はどうしてあれほどじゃが芋が好きなのだろう。肉じゃがは
言うに及ばず、コロッケ、シチュー、カレーライス・・・。殿方が
好きな料理にはじゃが芋がらみが実に多い。世間的には、イモと言
うと女性のイメージが強いようだが、少なくともじゃが芋に限って
は、男性の方が女性などよりよほど執着があるのではないかと私は
思う。

知り合って間もない頃、私の作った肉じゃががたまたまさん生の口
に入った、それが機縁で結婚した、と言ったら信じるだろうか。言
葉にすると些か芝居じみて聞こえるが、まるきり嘘というわけでは
ない。

もう二十年近く前になる。私はまだ学生の身分だった。確か豊島園
で大学主催のイベントが催された日のことだ。その日は学生証を見
せるだけで遊園地に無料で入れるというありがたい一日で、私は友
人たちと遊び半分でそのイベントに参加したのである。

肉じゃがは弁当のおかずだった。おにぎりに肉じゃがに、他にも何
か持っていったのだろうが覚えていない。あらかた食べ尽くしたは
ずだったが、肉じゃがだけが少しばかり残っていた。それを持って、
なぜか帰りに行きつけのスナックに立ち寄ると、さん生がいた。当
時は小勇と言って、まだ二つ目になりたての頃である。

無理強いした覚えはない。風の強い日で、相当埃まみれになってい
たのでむしろあまりすすめなかった。それでも「食べる」と言った
のは、単なる好奇心から、だったようだ。

頬張り、噛み締め、飲み込んで、まず第一声は「ほんとに自分で作
ったの?」という疑いの言葉だった。二十歳そこそこの今時の女子
大生が、こんな美味い肉じゃがをつくれるわけがない、と思ったの
だそうだ。

もともと料理好きの私は、当時からきちんとだしを取っていた。じ
ゃが芋や人参は丁寧に面取りし、つまり手間ひまかけてつくってい
るのだから、まずいわけがない。まして肉じゃがなどはお茶の子さ
いさい、別段誉められても嬉しくない程度の、まずは当たり前の料
理だった。

彼にとってはこの肉じゃがが、しかし一種のカルチャーショックだ
ったらしい。その時初めて、私を一人の女性として意識したようだ。
結婚の理由、というほど大袈裟ではないが、親しく付き合う端緒に
なったのは間違いない。

「独身男は肉じゃがが好き」というCMがあるが、はからずもこの
一事がそれを証明している。しかも実はあの肉じゃが、そもそも別
の男友達に頼まれてつくったものだった。男という生き物は、やは
りじゃが芋が好きなのである。

さて先般、北海道の知人から当地の馬鈴薯が届いた。早速、肉じゃ
がをと言いたいところだが、さすがにそこまでセンチメンタルな私
ではない。代わりにミルクをたっぷり使ったじゃが芋のグラタンを
つくった。さん生が「うまい、うまい」と喜んで食べたのは言うま
でもない。

レシピ(じゃが芋のグラタン)

1. じゃが芋は皮を剥き、一センチ厚ほどに切る。
2. 鍋に1を入れ、ひたひたの牛乳、コンソメまたはブイヨン、
塩、こしょうを加え、吹きこぼれないように注意しながら芋に火が
通るまで煮る。
3. グラタン皿に2を移し、表面にパルメザンチーズをたっぷり
とかけ、オーブンまたはグリル等で焼き色を付ける。

※じゃが芋は水にさらすなどして灰汁を抜かない方がいい。灰汁
を抜いてしまうと粘りが出ない。火から下ろす直前に生クリームを
入れるとこくが出る。

●テレビあらさがし『帰れる保険って何?』

テレビ番組ではなくて、CMのお話。最初は耳から飛び込んできた。
「かえれるほけん」をひたすら連呼する某保険会社のCM。
「ん・・・?“帰れる保険”って何?」って一瞬目が点になった私。
まったく、ら抜き言葉もここまで来たか。

世間が「ら抜き」を認める方向に動いてるのは確かだけど、イント
ネーションの問題も含めて、混同しがちな言葉については使う前に
再考すべき。まして公的電波に乗せる場合には。

こんなCM作ったクリエーターも問題だが、プレゼンの時点ではね
られず、しかも出来てしまったこのCMを自社の顔と認めて流させ
てる保険会社の首脳陣も大いに問題だ。心ある大人なら顔をしかめ
ると思うんだけど・・・?

●わらいぐま観察記

林家正楽師匠はご存じ紙切りの名人である。顔を見て、その人の横
顔を瞬時にしてシルエットで切り取ってしまうという妙技もある。
その正楽師匠がある日、さん生を見てこう言ったという。

「あんちゃん、あれに似てるんだよね、ほら、アメリカの映画俳優
・・・。トム・ハンクスは小のり(現・禽太夫師匠、ただいま真打
昇進披露目中)だし、ええと、ほら、『ダイ・ハード』に出てる・
・・」「ブルース・ウィルス?」「そう、それにそっくり」

さて、納得される方は何人いるか。ブルース・ウィルスのファンは
まず納得しないだろう。しかし実は何よりさん生本人が納得がいか
ないらしい。

「似てませんよ」
「似てるよ、紙切りの俺が言うんだから」
「そうですか?」
「そう、あんちゃんはブルース・ウィルス」

正楽師匠は、骨格のことを言っているのだろう。そう考えれば多少
は納得がいく。それでもいまだにさん生は得心していない。ブルー
ス・ウィルスが嫌いなのか? トミー・リー・ジョーンズなら納得
したのか(さん生はなぜか彼が殊の外お気に入りである。ちなみに
私はこの人、あまり好きではない)。ま、禿げかけた頭だけは、ブ
ルースもさん生も一緒。その点では完全に向こうに負けてるけどね。


●抄録(あとがきにかえて)

▼この10月から放送大学の3年次に編入、法律のお勉強を始めた
私。日曜、入学者の集い、つまりはオリエンテーションに出席。初々
しい若者から、背中をつついたらそのまま倒れてしまいそうな(失
礼)老人まで、実に色んな人がいる。昨年、職安経由でLINUX
の講座に3ヶ月通っていたが、その時のメンバーも多種多様で面
白かった。ちなみにオリエンテーションの前日の土曜日は、その
LINUX講座の同窓会で盛り上がる。

▼フジテレビの『EZ!TV』で“女子”アナ志望の“女の子”た
ちの特集をやっていた。どうでもいいんだけど「“女子”アナ」っ
て呼ぶのやめないか? それを言うなら「“女性”アナウンサー」
でしょうが。でも、実際に「“女子”アナ」になりたい、とのたま
う“女の子”たちを見て、何となく納得。絶対にアナウンサーにな
りたいと言いながら、しかも講師陣にもさんざん指摘されているに
もかかわらず、普段の生活の中で関西弁を使うのをやめない神戸の
おネエちゃん。子供時代にさかのぼって、人生の選択の全てを女子
アナのために決めてきた、洋服も女子アナだったらこれだと思って
決めてます、なんてことをかなり真面目に言ってる極めて視野の狭
い埼玉のおネエちゃん・・・。そう、所詮は「おんなこども」の職
業なのね。しかし、現役の「“女子”アナ」のみなさんは、「“女
子”アナ」なんて差別的な呼ばれ方をして嬉しいのかね?

▼最後にお詫びです。前号の文章中、「ざっくばらんに分担が決まっ
ている」というとんでもない日本語を書いてしまった! 「ざっく
ばらんに言うと、おおざっぱに分担が決まっている」と書くつもり
が、どういう具合か混同してしまったらしい。わたし的には、気持
ちはものすご〜く良くわかる間違いなんだけど(って、自分だけか)。
これじゃ、アナウンサーの言葉遣いを何やかや言う資格はないな〜。
と、猛反省している次第です。


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