はっきり言って貧乏である。噺家稼業であるさん生はもちろんだが、
フリーで広告関係の文章を書くのを生業としている私も、月々決ま
った収入があるわけではない。多いときはいいけれど、少ないとき
はこれは悲惨だ。
ちなみに我々夫婦の場合、お金に関してはかなりざっくばらんに分
担が別れている。住宅関連は一応大黒柱(の役を果たしているか否
かは別として)のさん生が、食費及び衣料品の類が私の担当である。
着る物にしても食べるものにしても、自慢じゃないが切り詰めるの
はかなり得意だ。特に食事に関しては、どんなに貧しくても3品以
上おかずがないと許せないという自分の性格が幸いしてか、いかな
る場合もあらゆる工夫を凝らして、かなり美味いものを作っている
つもりでいる。
結婚して早や十八年、貧乏メニューは数限りない。その場しのぎで
終わってしまうものも少なくはないが、貧乏いかんに関わらず、定
番として定着してゆく節約料理もある。中でも、もやし関連の料理
は、さん生にもすこぶる評判がよろしい。単にもやしが好きなだけ
かもしれないが。
とにもかくにも、財布の中身が乏しくなった時、もやしは実に心強
い味方である。近所のスーパーでは一袋29円の超安値。炒めたり、
味噌汁の具にしたり、場合によっては鍋物にも重宝する。何せ29
円。惜しみなく腹に入れられる。
ちょっと工夫の欲しい向きには和え物がお勧めだ。私はネギや油揚
げを使った辛子和えが好きである。茹でたもやしに、白ネギの斜め
千切り、それにやはり千切りにして湯通しした油揚げを和える。油
揚げはただお湯をかけるだけでなく、軽く茹でた方がいい。これら
を辛子醤油で和えるだけの簡単な料理だ。
美味しく仕上げるこつはダシを使うこと。私は辛子を直接ダシで溶
いてしまう。ダシは朝の味噌汁を作るときに大体2食分強を取り、
使わなかった分は冷蔵庫で保存。2日ぐらいはもつので、煮物や和
え物に役立てている。ちなみにそれは邪道だろうと言われるが、家
族2人の生活なので、ダシは全て一番でまかなう。二番まで取って
たら、もう、山のように料理を作らなきゃならなくなる。
ダシを取るのが面倒だ、という方にお勧めなのが、納豆を買うとな
ぜかついてくる「納豆のタレ」。納豆にダシ醤油をかける意味が私
にはわからない。納豆には生醤油でしょうよ! と固く信じている
のであれは一切使わない。でももったいないから、と冷蔵庫の隅に
いつも転がっているので、少量のダシが必要なときはあれを流用さ
せていただいている。
財布が多少潤っているときなら、鶏の笹身を酒蒸しにして細かく裂
いたものを加えると一層美味しい。でも、この料理、とにかく家に
「あるもの」ですまそうという魂胆から生まれているので、和える
ものに決まりはない。シメジや舞茸なんかもおつなもの。ただ、ネ
ギの千切りだけは極力欠かしたくない。実はあの香りと、辛子とは
ひと味違う辛みがアクセントになっている。ただし、入れすぎると
他の材料を圧倒してしまうのでほどほどに。